「お盆の海はダメ」 、川についても同じで「ダメ」。以前からあるこの警告にはどんなイワレがあるのでしょうか?お盆の水辺禁止は何で?期間はどのくらい??お盆に対する疑問の数々、色々な角度から紐解いてみたいと思います。
では、行ってみましょう!!
目次
お盆期間中の海はダメ!?様々な危険満載!
古からの水辺禁止令
最近では真夏日(セ氏30度以上)を通り越して猛暑日(セ氏35度以上)があたりまえになってますよね。40度を超える事もめずらしくなくなって来ました。上がり続ける気温と比例して、熱中症などの被害も増加しているとの事です。
暑さの盛りである「お盆」は特に、海や川といった水辺が恋しくなるところ。ですが、昔から「お盆中は海や川に入ってはダメだ」と言われていますよね。
波が高くなる為?霊に引っ張られるから?色々な説がありますが、果たして実際はどうなのか??自然のメカニズム的な視点から迷信の類などもひっくるめて、「お盆ちゅうの危険性」について改めて見ていきたいと思います。
海の危険性その1 土用波
台風の影響で夏の土用の時期に突然発生し、沿岸を襲う大波のことを「土用波」というらしいです。波の高さは通常の2~3倍にもなるそうで、発生する割合としては千波に一波程。「結構レアなのでは?」なんて思ったりしてませんか?
滅多に来ないという事は、逆に言えばいつ来るか分からない常に危険な状態という事。さらに土用波の最盛期は大潮とも重なっているそうなので、なおさら注意が必要になって来ます。お盆の海は、遠洋の台風の有無をまず確認しましょう!
海の危険性その2 離岸流
波が海岸から沖に戻る時に発生する強い流れの事を、離岸流(リップカレント)と呼ぶそうです。速さは最大で2m/sec(1秒に約2m進む)!足のスネほどの水深でも身体をもって行かれるとの所以は、このパワーにあった!?
また、この離岸流は気まぐれな性質みたいです。1ケ月近く同じ場所で発生し続けることもあれば、発生から2時間後には位置を変えていることもあるとか?
知らず知らずのうちに沖まで流されてしまうこともあるそうで、充分な注意が必要ですね。離岸流が発生しやすい場所としては、
- 海岸が外洋に面しているところ
- 遠浅で、海岸線が長いところ
- 近くに人工構造物があるところ
などが挙げられています。何だかどこの海にも当てはまりそうな感じですよね?そうなんです!このきまぐれな離岸流は、どこにでも発生する実にありきたりな流れ。なので、繰り返しになりますが「知らず知らずのうちに沖まで流されてしまっていた」なんて事に成りかねません。
もし流されてしまったら、
- 出来るだけ落ち着いて(難しいかもしれませんが)自分の状況を確認する
- 可能なら周囲に流されている事を伝える
- 無理に戻ろうとせずに岸と平行に泳ぐ
- 沖に向かう流れが止まったと感じたら一気に岸へGO!
泳ぎに自身がない場合は、とにかく力を抜いて浮く事に専念しましょう。異変に気付いたライフセーバーや周囲の人達が必ず救助に来てくれるはずです!
海の危険性その3 危険生物が潜んでいる!?
夏の海のヤバい奴。その代表選手であるクラゲには、猛毒を持っているやっかいモノが多いとか?お盆の時期に出没する出来れば逢いたくないベスト3がコレ!
3位 アンドンクラゲ
アンドンクラゲはほぼ日本全域に生息していて、6月から8月にかけて発生。3~3.5cmほどの立方型の傘の下に、20cm程の触手を4本持っています。
アンドンクラゲの画像がこちら
4本全部刺して来るのでしょうか?
刺された際の強い痛みから「電気クラゲ」の異名を持っていて、かなりの嫌われ者らしいです。刺されると患部はミミズ腫れのようになりますが、殆どの場合大事には至らないみたいですね(忘れられない位の痛みだそうですが)。
体が小さく透明で見えにくいため、気づいた時には刺されているというケースも多い!?海水浴やダイビング等、海では要注意動物の1つとなっている様です。
2位 カツオノエボシ
カツオノエボシは、本州の太平洋沿岸で良く見られるそうです。約10cmほどの透き通った浮き袋を持っているのが特徴で、触手は平均10cm程度、長いものでは約50cmに達するものもある!?
カツオノエボシの画像がこちら
1つの個体に見えるこのカツオノエボシ。実はヒドロ虫が多数集まって形成した姿だそうで。この群れ?の中で、それぞれのヒドロ虫が触手やポリプ、刺胞嚢になるものなど役割を分担しているらしいです。
アンドンクラゲ同様に「電気クラゲ」と呼ばれている種。刺されると患部は炎症を起こして腫れ上がり、強烈な痛みが長時間続くそうです。2度目に刺されるとアナフィラキシー(アレルギー反応の一種)を起こし、ショック死する危険も!?
また、頻繁に浜辺へ打ち上げられている様ですが、乾燥したカツオノエボシは青みのある容器の様な状態になるみたいです。
1度に多数のカツオノエボシと遭遇する事もあるみたい!?
由比ヶ浜海岸にカツオノエボシ
大量発生💦
10分歩いて10匹以上見つけました。
猛毒のクラゲなので綺麗でも触らないでください!#由比ヶ浜#カツオノエボシ#触らないで pic.twitter.com/tXU1EYDpLr— さわ🌊恋は波の上 (@2647e) 2018年5月3日
思わず手にとってしまいたくなりますが、罠だと思って我慢してください。この状態でもそれなりの痛みがあるそうなので、海中でも陸の上でも、とにかくカツオノエボシには近づかない事をおすすめします。
1位 ハブクラゲ
ハブクラゲは沖縄地方に生息し、5月から10月にかけて発生する様です。傘高は10~15㎝、伸縮する触手は伸びると1.5m以上にもなるとか!?
ハブクラゲの画像がこちら
しらたきの固まり??良く分からない危ないオーラ出てます・・
傘がほぼ透明で見えづらく、さらに小魚などを求めて浅瀬にまで入ってくるため、気づかずに接触して刺されることが多いそうです。
刺されると、患部は激痛を伴ったミミズ腫れに。刺されてから約6時間後にミミズ腫れは水疱に変化、12時間後には壊死を引き起こします。意識障害や呼吸困難、心停止に至ることもある!?過去に3件の死亡例がある等、特に危険な種の様です。
刺されてしまったら!?
応急処置は種類によってそれぞれ異なります。上記の3種の中で「酢」が効果を発揮するのはアンドンクラゲとハブクラゲです。カツオノエボシに刺された場合に患部に酢をかけてしまうと、逆に刺傷被害を悪化させてしまいます。
正しい対処法の知識を備える事は大切ですが、紛らわしい部分もあるので
- 患部を擦らない!
- 海水で良く洗う!(真水はダメ)
シンプルなこの2つだけを覚えておき、あとは医療機関へ急ぎましょう!
危険度MAX!?死者を量産する彼岸への案内人
日本に生息する毒を保有する者の中で、特に危険な2種を紹介しておきます。触るのは論外。見かけたら絶対に近づかない。そして出来れば、このヤバい奴らを見つけてしまった海には入らない!
海へ赴く際は、「触れない」「寄らない」「入らない」を念頭に。
ヒョウモンダコ
別名「殺人ダコ」。この体長12cmほどの小型のヒョウモンダコは、日本各地に生息域が広まっていると言われています。海水温の高い夏から秋に出没し、温暖化の影響からか日本列島を徐々に北上している様です。日本海の若狭湾沿岸では2015年秋から相次いで目撃&捕獲されているみたいです。
増殖中?のヒョウモンダコ
普段は黄土色から茶褐色をしていて、海底の岩等に同化。刺激を受けると上の画像の様に青く丸い斑紋と胴体に青くスジ状の斑紋が浮かび上がります。
テトロドトキシンとハパロトキシンという2種類の毒を保有。特にフグと同じ毒のテトロドトキシンは同量の青酸カリの500倍から1000倍の毒性を持っており、わずか2〜3ミリグラムの摂取で死に至るそうです。
ヤベー毒を使って噛み付いて来るクセに痛みがない場合もあり、変な優しさを持っている?なので、気づいたら(気づかない内に?)昏睡状態、さらにはこの世の境界線を越えているなんて事も・・・
アンボイナガイ
伊豆諸島・紀伊半島以南に分布する、この10cm前後の危険な貝は浅瀬にたくさん居るそうです。漁労、潮干狩りなどでの事故が多く、1年を通して被害が発生しているオールシーズン野郎。
アンボイナガイの致死率は2~7割!?
綺麗な模様はトラップの1種??
全生物中「最強」と言われるアンボイナガイのコノトキシンという神経毒は、インドコブラの37倍。30人程の人間を死に至らしめる量の毒を、小さな体内に保持していると言われています。「激しい痛み」「ほとんど痛みが無い」など刺された際の痛みについては、ケースバイケースの様ですね。
20分ほどで手足がしびれ、嘔吐やめまいなどの症状が現れるそうです。重篤の場合には目のかすみ、運動失調、呼吸麻痺により数時間後には死亡することも。
アンボイナガイの英名の1つ 『Cigarette snail』 (たばこの巻貝)には、「刺されて死ぬまでに煙草一服くらいの時間はある」という意味が込められているとか。時間がある?それとも時間が無い??一体どっち!?前向きに考えれば、すぐに死ぬ事は無いという事かも。
お盆期間の河川もダメらしい!?
河川の危険性
海水浴と並んで、川遊びも夏の風物詩の1つですよね。そして海と同様に川も、「お盆期間中はダメ」だと言われています。どんな危険が潜んでいるのか?元々の川の性質に関係がありそうです。
意外と知られていない!?鉄砲水(てっぽうみず)
上流地域で大雨が降ることで、水量と勢いが増加した「てっぽう水」と呼ばれる激しい流れに巻き込まれる危険があります。この「てっぽう水」は洪水のように一気に押し寄せ、土砂を取り込んで「土石流」へと変化。
増水スピードが速く、判断や対応が遅れるとあっという間に飲み込まれてしまいます。集中豪雨や長雨が続いた場合は以下の点に注意を!!
- 山鳴りがする
- 雨が降り続いているのに川の水位が下がる
- 川がにごったり、流木が流れる
- 腐った土の臭いがする
山鳴りについては、「山に風が激しく吹き渡る音」という事らしいのですが・・上級者向け?他の3点は注意深く観察すれば判りそうなので、とにかく何か異変を感じたら出来るだけ早く避難を開始してください。
土石流の動画がこちら
逃げ遅れてしまったらひとたまりもありません。悲しい被害を避ける為にも、避難への躊躇は最も厳禁な行為と覚えておきましょう。
河川独特な流れ
上流から下流へ。一定に見える川の流れは、水面と川底で違っているところもあり、実は想像以上に複雑なものの様です。堰堤(えんてい)などの人工物付近の水流は特に複雑になっていて、「リサーキュレーション」(循環流)と呼ばれる渦が発生しています。
強い回転力を生み出すこの流れに捕まってしまうと、たとえライフジャケットを着けていも危険!?
アクシデントが起こってしまうと正常な判断が難しくなり、脱出をより困難なものにさせてしまいます(パニックの最中に落ち着けは無理な話)。なので「橋脚」や「床止工」等、水難事故の多い人工物近くではより注意が必要です。
油断大敵!?水没する中洲
大雨等の急な増水により、中州は水没する可能性があります。「多分大丈夫」なんて油断していると気がついた時には逃げ道はなく、取り残されてしまったなんて事も。これまでも多くの水難事故があり、その度に危険性が訴えられて来ました。
中洲は子供だけではなく、大人も好奇心をくすぐられますよね(笑)
一見すると安全に見える??
身構え過ぎるのも何だか楽しさを半減させてしまう気がするので、「天候に直結する場所」「危険になる可能性がある場所」という事だけは、きちんと認識するようにしましょう。
水温の低さ
川の水温は夏場でもかなり低いです。じっとしていると耐えられない?入っていられないほどに冷えてる場合も。そこで心配されるのが低体温症です。
体温が下がってくると、人間の体は内臓を守ろうとして胴体に血液を集めるそうです。このために血液の循環が偏り、くちびるや爪が紫色に。プール上がり等でお馴染みな症状ですが、そのまま遊び続けると結構危険みたいです。
身体が冷えて来ても体温が約31℃以上であればシバリング(身体の震え)による熱生産で、ある程度の体温の維持が行われるそうです。ですが約31℃を下回るとシバリングは止み、急速な体温低下を起こしてしまいます。
そして18℃で心停止に、最悪の場合はそのまま死に至る事も・・。川遊びでの適度な休憩は必須です。
迷信は語り継がれる戒め??
一般にお盆の期間は8月13日~16日とされています(地域によっては7月のところも)。
13日の夕刻に迎え火(むかえび)を焚いて先祖を迎え入れ、16日に送り火(おくりび)を焚いて先祖を送り出します。15日に送り火を行うところも多いようですが、このお盆期間の往来に先祖等の霊は水辺を通るとされているそうです。
その際、成仏できない霊などが海や川といった水場に居る人を連れて行ってしまうと言われているらしいですね。人が多く集るという事は、それだけ水難などの事故が起きやすくなるという事。
『警察庁生活安全局地域課』から発表された平成29年夏期における水難者は647人となっていて、うち死者・行方不明者は248人 。25年~29年の5年間の水難発生状況を見てみると、毎年300人近い方が水難事故で命を落としています。
長雨や集中豪雨が頻発し、崖崩れや河川の氾濫などが増加する現在。様々な警告を含める意味で「水辺に近づくな」と伝えられてきたと考えれば、理屈を超えた説得力がある様な気がします。
まとめ
- お盆期間中の海が「ダメだ」と言われる理由は様々
- 「土用波」「離岸流」などの海の性質
- 危ない生物も多い!?
- 川も危険な性質を持っている
- 先人達の教えに一理あるのは確か!?
- 海と川、自然のものに触れるにはそれなりの知識が必要!
雄大な海や川は私たちに様々なものを与えてくれていますが、驚くほど簡単に命を落としてしまう危険な1面を持っている事は確かです。「いっそ行かないのが1番簡単で安全じゃない?」ってなっちゃいそうですが、知識や注意などの備えがあれば、豊かな自然を十分に満喫できるのではないかと思われます。
穏やかな時もあれば荒い時もある。そんな認識を持つだけで、多くの危険を遠ざける事が出来るはず!?楽しい想い出を作る為の、少しの準備を是非入念に!!
以上、「お盆中の海や川がダメな理由って何!?期間はどのくらい??」でした!